たくさんの出会いの中で、自分の「今」が見えた旅でした。
船に乗ることを目標に
以前、埼玉県に住んでいたときにピースボートのポスターを見かけたことがあり、「すごいな、行きたいけど仕事がなぁ」と思っていました。公務員だったんですが、定年はまだ先だけど、このまま最後まで働き続けない人生もあるのかもしれない、とも考えていて、「船に乗る」というのをひとつの目標にすれば、辞めることができるんじゃないかと。それで、コロナの少し前に仕事を辞める決意をして申し込みました。
ラブストーリーは突然に
実は、出発を待っている間に夫と出会い、結婚しました。だから夫との結婚も「数年後、世界一周に出かけます」ということが前提でした。快く送り出してくれた夫には本当に感謝していますね。加えて、新たに保険の総合代理店で働き始めました。前職での経験を通して、お金に対する漠然とした不安や将来のことを話せる「お金の相談者」になりたいと思ったんです。もともと持っていた税理士の資格に加えて、ファイナンシャルプランナーの資格も新たに取得しました。会社の方からは「少しでも仕事を経験してから行って来たら」と言ってもらい、出発のギリギリまで働いてから乗りました。
さまざまな人生ストーリーとの出会い
船は実際に乗ってみると、いろんな意味で想像と違いましたね。勝手なイメージですが、こういう船旅って「友情、仲間、青春」みたいな感じだと思っていたんですよ。生涯の友人ができるような、そういう“熱いもの”を想像していたんです。若者は私が想像していたような”熱い旅”を送っている人もいて、でもそこにはちょっと乗り切れない自分がいて、それは自分が歳を重ねたからであり、いろんな見方や接し方ができることに気付けました。老若男女いろんな人と知り合えて、その人の人生を聞いて自分の中に取り込むことができる――皆さん、素晴らしい人生を歩んでいるので、そういったお話を伺えることがすごく楽しかったです。
人生の先輩から刺激を受けた
船内では、フラダンスにも挑戦しました。水先案内人のサンディーさんの話を聞いて「こんな人いるんだ」と興味が湧き、5回限定の有料レッスンを受講したんです。フラメンコの経験はあったけど踊り方も全然ちがうし、有料だから本気でやれるところも気に入りました。レッスンは一旦終わったんですが、メンバーはまだ自主的にレッスンを続けていました。なかでも70代の先輩方はフラダンスをやりながら、さらにイベントの実行委員もやっていて、そういう姿にとても刺激を受けましたね。それで私も思い切ってイベントの実行委員になり、企画に携わりました。いろいろ感じることもあり、やってよかったと思いましたね。
自分の目で見た風景と現実
寄港地ではナミビアが印象的でした。建物や記念碑を見る寄港地もありますが、ナミビアは自然をちゃんと「目で見る」ことが多かったですね。砂漠やフラミンゴ、ムーンランドスケープなど、世界の果てを感じるような風景をたくさん見ることができました。「世界最古で8000万年前にできた砂漠」って言葉で言われてもわからないけれど、テレビで見た光景が目の前に広がっているというのが楽しかったです。マダガスカルでは、今まで見てこなかった世界の貧富の差を目の当たりにしました。自分の恵まれた環境を含めいろいろ考えることも多くて、心を持っていかれるような経験をしたと感じています。
帰る場所があるありがたさを感じて
今のこの年齢で旅に行くというのは、周りの協力あってこそだと思っています。帰る場所があって待っててくれる人がいるのは、とても力になる。だからお土産もたくさん買いたいと思って、事前にリストを作りました。「アルパカのキーホルダー50個」など、たくさん買ったけど足りないかもしれません(笑)。渡すのも楽しみですね。夫が定年を迎えたら、今度は一緒に乗船しようと言ってるんです。私は最初オーロラが見たくて夏クルーズを希望したんですが、夫も見たいと言うので「楽しみをとっておこう」と、このクルーズに変更したくらい。「心配しないで、楽しんできて」と言ってくれた夫に感謝ですね。
この歳だから得られた経験がある
乗船者の中では、40代は一番少ない年代だと思うんです。定年が65だったら、あと20年。そう思うと一回どこかで好きなことを…と考えるのかもしれませんね。この旅で何かが大きく変わったかというとわからないですが、普段の生活に戻ればこの船で出会った人や聞いた話を、ひとつひとつ思い出していくのかな。私たち40代は「今」のことを話しますし、若い子たちは「新しい未来」を語りますよね。上の年代の方たちからは昔の話を聞いて、そこに学びもあります。若いときに乗っていたら何か違ったかもしれませんが、今この歳で乗ったことでまた、今後が変わっていくのかなと思っています。
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