サファリへようこそ
世界有数の自然が広がり、見たこともない光景が数多く点在するアフリカの地。見どころは多岐にわたりますが、ハイライトとも言うべきものが、どこまでも続くサバンナで自由に生きる野生動物たちとの出会いです。アフリカでナチュラリストガイドとして従事し、現在もサファリをフィールドに活動を続ける加藤直邦さんに、サファリの魅力や楽しみ方、さらには野生動物たちの生の営みについてお話を伺いました。
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加藤直邦さん(ケニア政府公認サファリガイド)
1972年静岡県生まれ。タンザニアの野生生物管理大学にてワイルドライフマネージメントを学ぶ。卒業後、1年間アフリカを遊学。ケニアのマサイ・マラ国立保護区にあるロッジでナチュラリストガイドとして5年間勤務。日本人初のケニア・プロサファリガイドライセンスを取得。現在は、動物専門学校の非常勤講師やアフリカ専門旅行社「道祖神」にて年に数回のサファリツアーを実施している。
僕の職場は“サバンナ”
僕は、ケニア政府公認のサファリガイドとして仕事をしています。もともとは東アフリカに10年ぐらい住んでいたのですが、現在は日本にいながらアフリカ専門の旅行会社で添乗員兼ガイドとして、お客さんと一緒にツアーでアフリカを訪れています。だから僕の職場は日本ではなく「サバンナ」。アフリカにある開けた草原のことをサバンナと言いますが、そこが自分のフィールドだと思っています。アフリカはとても大きな大陸で、日本の国土が90個入ると言われるほど。その国ごとに文化や伝統なども違うし、その土地土地で出会える風景も全然違うんです。
サファリドライブを楽しむ
アフリカには本当にたくさんの動物が住んでいて、その数は2万5000種とも言われます。動物たちはそれぞれの性質に合った場所に生息していますが、「保護区」と呼ばれる場所では野生生物が優先して保護され、その動物たちを見ようとたくさんの観光客が訪れます。保護区では「サファリドライブ」で、車の中から野生動物を観察できます。ここに暮らす野生動物たちは毎日観光客が来るので、サファリカーが悪いことをしないと理解している。だから、ほとんど逃げないし、驚くほど近くで普段通りの営みを見せてくれるんです。
肉食動物たちの食物連鎖
運が良ければ食事をしているライオンを見ることもできます。ライオンはハンティングが下手で週に一回食事ができたらいい方なので、見られたらとてもラッキーですよ!肉食動物は夜行性の動物が多いので、ハンティングのシーン自体を見るのがなかなか難しいんです。ドライブは日の出から日の入りまでと決まっているので、早朝の日の出あたりでドライブに行くとハンティングのシーンを見られるかもしれません。ハゲワシやハイエナ、ジャッカルといった動物を見ることもありますが、彼らは「スカベンジャー(お掃除屋さん)」と呼ばれる存在。サバンナがいつもきれいなのは彼らのおかげなんです。
命はぜんぶつながっている
有名なミュージカル『ライオンキング』にも登場する、「サークル・オブ・ライフ」という言葉があります。すべての命がつながっていることを意味しますが、サバンナではライオンの食べ残した肉は、お掃除屋さんのハゲワシやハイエナたちが食べる。ライオンもいつしか死に、朽ちたその体は土に還り、そこから生えた草をまたシマウマが食べる。そんなふうに、命はぜんぶつながっているんですよね。だから、彼らがお掃除しているシーンもぜひ見てほしいですし、動物園では見ることのできない、こういった生のシーンをサファリで体感してほしいなと思います。
懸命に生きる動物たちの美しさ
たくさんの野生動物たちを見ると、最初は「かわいい!」と夢中になって写真を撮りますが、それらも段々見慣れてしまうと風景の一部のように感じることもあります。でも車を止めて、カメラや双眼鏡で眺めると、つやつやの毛並み、筋肉の張り具合、キラキラした目――本当にそれぞれが美しいんです。それは彼らが一生懸命生きているから。厳しい環境の中では、一頭一頭がベストコンディションじゃなければ生きていくことができないですし、もし少しでもコンディションが悪ければ次の日には死が待っている世界です。ぜひじっくりと観察してほしいです。
何に出会えるかわからない楽しみ
サファリでは、偶然はつきもの。動物が檻の中にいる訳ではないので、何に会えるか分からないという緊張感と楽しみがあります。それでも、期待していた動物に会えないときは「きっと神様がまたおいでって言ってるんだな」と、ぜひまた来てもらえればいいかなと思います。逆に期待せずに、すごいものを見られることもあるんです。僕はライオンとヒョウの取っ組み合いの喧嘩を見たことがあります。でも、そんなときに限ってカメラを持っていないんですよね(笑)。本当に何が起こるかわからない、その“偶然”を楽しんでいただければと思います。
サバンナはリラックス空間
サバンナは、場所そのものがリラックス空間です。動物がいなかったとしても、広大な大地を車で走っているだけでも、ものすごくリラックスできます。皆さんが旅をされる船の上は360度水平線ですが、サバンナは360度全部地平線。果てしなく草原が続く、すごく気持ちの良い空間です。そして、アフリカのサバンナというのは人類発祥の地。いわば、僕ら人間の生まれ故郷ですね。そんな風景を眺めながら、人類の長い旅路に思いをはせるのも面白いんじゃないでしょうか。ぜひアフリカの地でサファリを楽しんでいただきたいですね。
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