2025
02.12
「水のエレベーター」パナマ運河の仕組みとは?太平洋と大西洋をつなぐロック式運河

「水のエレベーター」パナマ運河の仕組みとは?太平洋と大西洋をつなぐロック式運河

運河


世界三大運河の一つとして知られるパナマ運河。太平洋と大西洋を結ぶ運河で、世界貿易を支える重要なインフラでもあります。

本記事ではそんなパナマ運河の仕組みを解説。気候変動により水不足に悩まされている現状や、日本国内でも同じ仕組みを使ったスポットなども掲載しています。

最後にはパナマ運河を経由するクルーズプランも紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

パナマ運河は、パナマ共和国を横断する形で建設された、全長約80kmの人工水路です。1914年に開通し、世界の海上貿易において非常に重要な役割を果たしています。

アメリカ東海岸とアジア・西海岸を結ぶルートで、多くの船舶が利用します。もしパナマ運河がなければ、南米最南端のホーン岬を回る必要があり、約15,000kmも余分に航行しなければなりません。大西洋と太平洋を結ぶ重要な航路であり、スエズ運河、キール運河とあわせて「世界三大運河」のひとつです。

そんなパナマ運河の「水のエレベーター」とも呼ばれる仕組みについてみていきましょう。

水のエレベーター|閘門(ロック)の仕組み

閘門(こうもん、以下より閘門とします)ロックは異なる水位の海をつなぐために、閘門と水を利用して船を昇降させる仕組みです。

ガトゥン湖とチャグレス川の役割|水位調整の仕組み

ガトゥン湖とチャグレス川は、パナマ運河の水位調整に欠かせない役割を果たしています。

ガトゥン湖はパナマ運河の中央に位置し、船が大西洋側と太平洋側を行き来する際のルートでもあり、人工湖です。

チャグレス川は、ガトゥン湖の水源であり、雨によって湖に水をもたらし、運河の水位を保っています。

閘門で船を昇降する際には、ガトゥン湖の水が利用されており、水位を調整する役割があるのです。排水は海へ流され、パナマ運河は電動ポンプなどを使わずに水と重力の仕組みを活用して成り立っています。

船が運河を通過する時の流れ

大西洋と太平洋のどちらから航行するにせよ、海抜26mのガトゥン湖を通らなくてはなりません。「水位の低い海」→「水位の高い湖」→「水位の低い海」の順番でそれぞれの場所の閘門で昇降して進むのです。

以下が大まかな流れになります。
大西洋(カリブ海) ⇔ ガトゥン閘門 (3閘室)⇔ ガトゥン湖 ⇔ ペドロ・ミゲル閘門(1閘室) ⇔ ミラ・フローレス湖 ⇔ ミラ・フローレス閘門(2閘室) ⇔ 太平洋

パナマ運河が無いとどうなる?

GoogleMap: Panama Canal

パナマ運河を利用すると大西洋と太平洋を最短距離で航行できます。パナマ運河がない場合、船は南米最南端のホーン岬を迂回しなければならず、航行日数が大幅に増加します。具体的に航路の短縮は平均で約8,000 海里(14,800km)にものぼり、短縮される日数は約10 日から20 日ほどです。

航路や航行日数が増えることで燃料費や人件費、運航コストがかかるため、貿易コストも増大するでしょう。 国内輸送や国際貿易への影響は大きく、物価上昇や貿易量の減少につながる可能性もあります。

また、メキシコ湾岸から日本へもパナマ運河経由が最短です。

経由航路航行距離航行日数
パナマ運河経由約9,200海里(約17,000km)およそ21.3日
スエズ運河経由約14,500海里(約26,850km)およそ33.6日
喜望峰経由約15,700海里(約29,050km)およそ36.4日

距離や日数以外に自然環境への負荷が増えることも懸念されます。長距離航行による二酸化炭素(CO₂)排出量の増加やエネルギー問題、海洋生態系への影響などが考えれれるでしょう。

参照:独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
参照:一般財団法人 運輸総合研究所 ワシントン国際問題研究所レポート

水不足に悩まされるパナマ運河

パナマ運河は、世界の貿易にとって不可欠な水路ですが、水不足に直面することもあります。例年11~4月頃まで乾季とされガトゥン湖の水位が低くなります。それに加え、気候変動や降水量の減少により、水資源の確保が難しい場合があるのです。

過去には、2023年のエルニーニョ現象による影響で運河周辺の降雨量が大幅に減りました。約2mほど水位が減少し、通常通りの水量が利用できなくなってしまったのです。2024年は運航隻数を減らして運用されていました。(通常の通航実績:36隻/日→32隻/日など)

日本にある水のエレベーター|富岩水上ライン

日本にもパナマ運河の仕組みを利用して、船を移動させる「富岩水上ライン」というクルーズがあります。パナマ運河と同じように船が水位差を乗り越えるために、水の力を利用してエレベーターのように持ち上げられます。富岩運河の風景を楽しみながら、非常に珍しい体験ができるスポットとして人気です。

富岩水上ライン運航MAPはこちら

【2026〜2027年】パナマ運河を経由するクルーズプラン紹介

ピースボートではパナマ運河を経由する世界一周クルーズツアーを催行しています。どのクルーズもクリストバル(パナマ)を出航後、パナマ運河を経由してそれぞれの寄港地へと向かいます。それでは『パシフィック・ワールド号』で行くおすすめのクルーズプランの紹介です。

地球一周の船旅 2026年4月 Voyage123

「世界一美しい」と讃えられた街・カルタヘナ(コロンビア)、運河に囲まれた美しき港湾都市・アムステルダム(オランダ)、雄大な自然に彩られた北極圏の街・トロムソ(ノルウェー)、美しき港街・ナポリ(イタリア)のほかにも北極航路などを進みます。ヨーロッパ・中米北極エリアの各地の見どころをめぐる世界一周クルーズプランです。

地球一周の船旅 2026年8月 Voyage124

文化と芸術を堪能できる魅惑の都市・バルセロナ(スペイン)、アドリア海に面した美しき港町・バーリ(イタリア)、古き良きを感じる街・ダナン(ベトナム)、世界屈指のリゾート・ホノルル(アメリカ・ハワイ)など、地中海・中南米・南太平洋を巡る、世界各地の街並みと古代都市が堪能できるクルーズプラン。さらにベルファスト(イギリス)からレイキャビク(アイスランド)への航行中はオーロラを観れるチャンスもあります。

地球一周の船旅 2027年8月 Voyage126

パナマ運河以外にも、地中海・ヨーロッパ地域だけで13の寄港地を訪れます。最先端の文化が集まる世界有数の大都市・ニューヨーク(アメリカ)、大航海時代を象徴する華やかな街・リスボン(ポルトガル)、やバンクーバー(カナダ)、ロンドン[ティルベリー](イギリス)、ポートサイド(エジプト)など数多くの各地の主要都市にも寄港する、ヨーロッパ・アラスカ・北中米を巡る世界一周クルーズプランです。