クルーズコレクション

赤羽から世界へ。枠を飛び出し見つけた、新たな可能性

2024年8月7日

インタビュー

「昔と比べて、健康に対する在り方が変わってきていると感じますね」。そう語るのは鍼灸師の岩井隆浩さん。オランダのアムステルダムに住みながら現地で鍼灸院を営み、さらには日本でも複数の会社を経営するという異色のキャリアの持ち主です。「鍼灸院」という箱を飛び出し、新しい治療の在り方を模索しながら挑戦を続ける岩井さんに、ご自身が歩んだ道のり、そして自身が届けたいと願う「健康と幸せ」についてお話を伺いました。

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日本を基地に、世界へ飛び出す発想で

大学卒業後、鍼灸の専門学校で学びながら国家資格など5つの資格を取得し、街の鍼灸院や整骨院で修行を積みました。鍼灸師として独立後は、一時期カナダのトロントで施術をしていたのですが、そこで日本人鍼灸師の需要の高さを目の当たりにしたんです。日本人はもともと感度も高くて、状況や症状を汲み取る力も強い。それが治療とマッチするんです。それで、「これからは世界を舞台に戦えるようになりたい」と、日本に帰国して仕切り直しつつ、世界へ出る準備を進めました。途中、2013年に麻布十番に治療院を開業し、さらに10年後の2023年にオランダへと渡り、今も現地で治療に携わっています。

原点は赤羽の街。心の師匠との出会い

そもそも、鍼灸や施術の仕事に出会ったのは小学生の頃でした。僕は東京の赤羽で育ったのですが、近所にすごく仲の良いおじさんがいて、その方が鍼灸接骨院を営んでいたんです。小中高時代はサッカー漬けだったのでケガをするたびにお世話になっていたし、家族ぐるみの付き合いがありました。おじさんは街を歩くだけで声をかけられるような人気者。接骨院も繁盛してて、手に職もあって、とにかくカッコよかった。だからその当時から、僕の中では「鍼灸の仕事が将来の選択肢としてあったんですね。おじさんは今でも“心の師匠”ですし、事あるごとに挨拶に行くような大切な存在です。

ダンス×鍼灸=自分の価値を高める

高校まではサッカーに打ち込み、毎年ヨーロッパ遠征にも行っていました。現地ではホームステイもして、「こんな世界があるんだ」と知ることができた経験も僕の中では大きかったですね。進学した体育大では、今度はダンスという新たな出会いがありました。ダンスを軸にアメリカやヨーロッパに行く機会も多く、コンテストで2度の優勝を果たした頃から自分の中で「ダンス」という専門性を自覚した気がします。小さい頃から意識していた“鍼灸の治療”と、目の前に現れた“ダンス”。いつしか「自分の経験」と「やりたいこと」が掛け算されてつながり、それが今の仕事へと続いていると感じています。

Yoshida Taisuke

治療のその先にある「健康と幸せ」

治療の現場では、常に施術の意味や治療のゴールがどこにあるかを考えています。患者さんが抱えている問題も課題も辛さも、全然ちがいますから。若い頃は患者さんの辛さに対して、「この施術で良くなっただろう」と、自分の技術を誇ったり勘違いしやすかった部分もありました。でもゴールはそこじゃないんですよね。症状にフォーカスしてその部分を良くしていくことは大事だけど、その背景にある「その人の本当にやりたいこと」を見失わないよう、今は施術にあたっています。やっぱり、「健康でいることによって幸せである」が本当のゴール。「健康と幸せ」を繋げていくことを目指したいです。

Yoshida Taisuke

西洋と東洋、二つを合わせた統合医療

いわゆる病院という場所は、基本は「西洋医学」の世界。一方で、鍼灸の世界は「東洋医学」の領域も大きいです。僕も臨床という施術を通じて、理解を深めていった感じです。歴史上、西洋医学が果たしてきた役割はすごく大きくて、寿命が延びたり、簡単に命が失われなくなったのも西洋医学のおかげ。でもそうなると、次は「どう生活に根差した健康を考えていくか」という話になる。そういった時流の中で、東洋医学の考え方が現代にフィットしていると注目され始めています。命を守るベースとして西洋医学はとても大事な反面、「何となく不調」とか「予防したい」という場面では、東洋医学も有効なんですね。

海外での新たな挑戦

オランダでも、治療をとおして技術を信頼していただき、認められてきたという実感があります。海外の方は、きちんと説明を聞きたいという方が多いんですね。「こういう検査をしました、あなたの体はここが課題です」と伝え、今後の施術の方向性と計画をはっきり示さないと不信感につながるので、そこは意識しています。日本みたいに「やりながら考えましょう」は通用しないので。欧米は西洋医学が発達している分、東洋医学に対する期待値も高いと感じます。「薬を飲んでいるけど、このままでいいのだろうか」という感じで、セカンドオピニオンとして東洋医学の施術を受けに来る印象です。

箱を飛び出し、「治療」を携えて世界へ

現在の日本では鍼灸院や整骨院の数は飽和状態で、健康保険の適用という良い制度はありつつも、「健康への価値」という観点では無頓着な気がしています。だから治療院という“箱”を構えてその中で待っているだけでは、どんなに良い技術があっても来てくれた人にしか治療を届けられない。だったら、良い技術を携えて自ら外に出て行けばいいと思うんです。日本で経営している治療院では、スタッフは全国を飛び回って、プロのアスリートや芸能人の方の現場で直接施術をしています。治療院は基地のような場所、これからも必要とされる場所へ、世界も視野に入れて飛び出していきたいです。

Yoshida Taisuke

旅は、刺激とリラックスの掛け合わせ

「健康」の意味は人それぞれですが、これまではお医者さんが病名を付けるかどうかに偏っていた気がします。でも健康の在り方として「病気がなければ健康か」というと、そうではないですよね。今の状態から、どうプラスにしていくかが大切だと思います。人間はリラックスも大事ですが、ちょっとした刺激やストレスも実はすごく重要なんです。だからピースボートのように船で旅をしながらいろんな場所を訪れて、たくさんの人と交流を楽しむのは良い刺激になりますよね。刺激とリラックスをうまく組み合わせることで、どんどん元気になると思うし、もっと楽しもうという発想につながるんだと思います。

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岩井 隆浩

柔道整復師、鍼灸マッサージ師免許を取得。 整骨院・整形外科・鍼灸マッサージ院にて、多くの臨床経験を積む。 その一方、複数の治療院の開業やリニューアルに携わる。電子カルテを開発提供する会社を創業して業界の発展に貢献している。自身のダンサーとしての経験から、アーティストのヘルスケアを支援する活動や舞台・公演・コンサート等への帯同も精力的に行っている。海外で臨床経験を積むなかで、日本の治療技術の高さ、人との繋がりやコミュニケーションの重要さを感じたことが、現在の治療方針にも繋がっている。 国内での活動に加え、オランダ・アムステルダムをはじめとする海外への治療院展開にも力を入れている。

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