クルーズコレクション

旅の体験が自分をつくる

2024年7月21日

インタビュー

「世界的ファッションブランド「Vivienne Westwood社」のデザイナーとして活躍後、現在もさまざまな分野で才能を発揮するKATSUYAさん。「もし機会があるなら、次は海底に行ってみたいんです。誰も見たことがないものを見てみたいし、心がワァーってなればいいなと。旅ってそういうものですよね」――これまで世界中を飛び歩いてきたKATSUYAさんの、経験に裏打ちされたその言 葉からは、旅が人に与える目には見えない力を感じます。自由な発想でデザインの世界の最前 線を走り続けてきた彼が紡いできた、旅のストーリーとは。

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*ヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood):イギリスを代表するファッションデザイナー。1981年、自身の名を冠したファッションブランド「 Vivienne Westwood」で初コレクションを発表。以降、ロックやパンクなどの前衛的ファッションと、英国の伝統であるクラシカルなスタイルの融合で、世界中に熱心なファンをもつ。

Yoshida Taisuke

現在、世界全体が均一化して、どこに行っても同じものが見れ、手に入る時代。旅のスタイルも変化していると感じます。その土地のもつ空気感や季節ごとの匂いなんかが好きなので、インターネットをはじめ「何かで見た、知った」だけで満足してしまう今の風潮は寂しいです。その場所に行って初めて、おもしろい発見がある。Vivienneのもとでデザイナーとして仕事をして、訪れた先で見たものを自分の中で消化して、新しいデザインを生み出していました。同じように、「旅」というものもそこで得た体験を自分の中に落とし込んでいくものであってほしいなと思っています。

デザインは発想と発明

毎回コレクションのテーマに対し、それをどういうふうに表現をするのか、ということを指示されることはありません。彼女からは「机の前にいてもデザインは何も生まれないよ」と言われていました。テーマから自分なりの考えを派生させて、湧いてきた疑問や答えを、1つのコレクションの度に海外をめぐって、自分の目で見て、そこからインスピレーションを得て深めていくんです。当時はまだスマートフォンなどのデジタル機器もないので、「とりあえず撮っておこう」もできず、全部手描きでスケッチをしていました。

歴史あるものに刺激を受ける

私が訪れた場所で言うと、バルセロナのガウディの建築物や、フランスのベルサイユ宮殿、あとはスコットランドのエディンバラの古城などが印象に残っています。古城では、ガーデニングですね。職人さんたちが庭を造っているところを上から眺めていると、ちゃんと計算されたきれいな幾何学模様になっているし、何百年も前からそうしたことをやっている人たちがいることも本当にすごいことだなと。エジプトのヒエログリフに出会ったときもそうでしたが、昔のものを見ると逆に新鮮味を感じ、そういった過去のテイストも大きなインスピレーションになりました。

自分の“いいな”からデザインが生まれる

そうやって「よーいドン!」で世界中を周りましたが、すべては直感と「いいな」なんです。だから極端な話、地球一周してもいいでしょうし、身近な場所でそれが見つかる場合もある。ネットで検索すれば全員が同じ情報を得ることができる現代とはちがい、当時はすべてがアナログからのスタート。誰とも発想がかぶらない唯一無二なデザインが生まれる。そこが面白かったですね。そういう世界で仕事をしていました。

やりたいことが叶う場所へ

独立して個人で仕事をするようになってからは、空間づくりや建物のリノベーションデザインなど、 依頼される仕事の幅もさらに広がりました。 皆さんが、もし洋服を作りたいと思うのならば、やはり一度海外へ行ってみるのがいいと思います。1か月でも2週間でも、まずは現地でいろいろと感じて、そこで自分が「どうしたいのか」を考える。逆に着物、和物に関することをやりたいなら、やっぱり日本で学ぶ方がいい。自分のやりたいことがどこに行けば実現するか、どこで仕事をしたいかで決めるのが一番です。 その場に赴くことで何をやりたいか、一歩進んで身体全身で感じてみて欲しい。

ミラノの移動サーカスで出会ったピエロ

私は幼少期をイタリアのミラノで過ごしました。 日本人の海外移住はまだ珍しい時代でした。現地の幼稚園に通っていたのですが、言葉もわからず毎日泣いてばかりで。その頃、週末によく家族で行ってた移動サーカスでピエロに出会ったんです。ピエロって言葉を話さないのに、パフォーマンスや衣装の色使いで人の心を掴む。その姿が幼いながらも心に響いたんですよね。それからは幼稚園で、教室壁一面が覆われるほどまでピエロの絵ばかり描き、それがきっかけでクラスメイトと仲良くなりました。それがデザインするきっかけになったのかもしれないです。

世界的デザイナーからのスカウト

小学生のときに一旦日本に帰国しましたが、高校卒業後の進路に迷い、再びヨーロッパへ渡りました。各地を旅しながらいろんなものを見て感じる中で、気づけばファッションのデザインをしたいと思うようになったんです。 子どもの頃からピエロをはじめ、いろんな絵を描いていたこともあって、デザインを重視するミラノで学ぶことを決めました。入学した学校は世界屈指のファッション名門校で、ある日の授業でデザイン画を描いているときに声をかけてくれたのが、たまたま来校していたデザイナーの Vivienne Westwoodさんでした。ずっと憧れていた方に、「おもしろいデザイン描いてるね」と声をかけてもらえたのには驚きましたが、さらに「卒業したらうちで働きなさい」というお話もいただき、 すごくうれしかったです。

常識を超えた場をつくりたい

今後はアミューズメントパークや遊園地を造りたいと思っています。幼少期に行った移動サーカス、遊園地の思い出もベースにありますが、老若男女さまざまな国の人たちが気軽に集えて、安らぎを感じられる場をつくりたい。アトラクションの他にいろんな体験ができて、たとえば食事もそこでなければ食べられないものを開発したら楽しいだろうなと。内装やコスチュームも考えたいし、乗り物のデザインは未経験なんでぜひやってみたいですね。今あるものを、なぞるようなものをつくるつもりはありません。オリジナリティがあって、文化や常識にとらわれない、新しい発見ができる場になればおもしろいですよね。

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KATSUYA デザイナー

1975生まれ。ISTITUTTO MARANGONI (MILANO,ITALY) 卒業。幼少時代、父親の赴任先であるミラノで生活し小学校時代に帰国。高校卒業後再度渡伊し、ISTITUTTO MARANGONI MILANOへ入学。ファッションデザイン修士取得、卒業後Vivienne Westwoodのもとでデザインを学び、パリコレ、ミラコレを手掛け、その後ヨーロッパで多くのコレクションを手掛ける。2008年 KATSUYA DESIGN OFFICE設立。『OOE』ブランドを設立し、バッグ、ジュエリーなど多くのファッションアイテムをパリで発表、国内外で他社と提携しデザイン、企画、プロデュースし空間デザイン、インテリア、プロダクトデザインなど手掛ける。

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