海と空の青がとけあう、世界遺産の島々へ
インディゴ、コバルト、マリンブルー・・・私たちを待っていたのは、さまざまな「青」が競演する世界遺産の海――太平洋に浮かぶパラオ共和国は1000種を超える生き物たちを育む海、そして手つかずの大自然が残る島国です。海で、山で、存分にアクティビティを楽しめる一方、人口2万人にも満たない国に年間16万人もの観光客が訪れ、稀有な自然環境が危機にさらされているのもまた事実です。そんなパラオで出会ったのが、美しい景観を未来へ残すための「ある約束」でした。訪れる人びとの意識に変化をもたらす画期的な取り組みが、南の楽園の未来を変えようとしています。
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文・構成 / 編集部 写真 / PEACE BOAT
世界遺産ロックアイランド
夜明け頃、船のスピードが緩やかになったタイミングでデッキへと上がると、かすかに昇りはじめた朝陽を浴びて海の中から島影が浮かんでいます。大小400余りの島々、パラオが誇る世界遺産ロックアイランドです。キノコのようなユニークな形は、石灰岩の島を数万年という途方もない時間をかけて潮流や生物が浸食したもの。数百種のサンゴや多種多様な生物が生息し、3000年前の人類の営みの跡も発見されています。静けさのなか朝陽によって次第に色を帯びてゆく島、海、空――いつの間にかデッキにはたくさんの人が集まり、言葉にできない神秘的な光景に見入ります。
乳白色の入り江ミルキーウェイ
パラオ上陸後、今度は小型ボートに乗り換え再び海へ出ます。水しぶきを浴びながら高まる期待、到着したのは先ほど本船から見た、ロックアイランドに囲まれた入り江ミルキーウェイ。波ひとつないコバルトブルーの入り江、すると突然ガイドさんが海へと飛び込みます。海底から手にしてきたのは乳白色の泥。島々から溶け出した石灰岩が泥となって沈殿していて、この泥を塗れば豊富なミネラル分による保湿・美肌効果があるんだとか。全身真っ白になった姿に笑い合い、乾いたらそのまま海の中へダイブ!泥と一緒にすべてが洗い流されていく感覚、幸せすぎて思わず目を閉じてしまいます。
鬱蒼と茂るジャングルの先に
北部のバベルタオブ島は、緑豊かなパラオを象徴する場所。鬱蒼と茂るジャングルへと入れば風が葉を鳴らす音、鳥たちのさえずり、自然の生命力が全身に押し寄せてきます。ガイドさんの先導で森の中を進み、辿り着いた先に待っていたのはパラオ最大の滝ガラツマオの滝。落差30m、滝幅37mの大滝にテンションも上がり、思い切って滝壺へと近づきます。滝の水がミストとなって降り注ぎ、周囲にはマイナスイオンもたっぷり。パラオといえば海のイメージが強いですが、太古のままの姿をとどめた森もまた、自然との一体感を味わえる場所です。
平和が訪れた島で
海と森をたっぷり楽しんだあと、パラオの中心地コロール島にやってきました。さっそくペコペコのお腹を満たすべく、海沿いのレストランへと入ります。頼んだのは、パラオ名物マングローブ蟹。蒸したての蟹は爪の先までプリプリの身がぎっしり!想像以上の美味しさです!パラオの町を歩くと日本語の看板をよく見かけますが、これは日本統治時代の名残なんだとか。南部にはかつて太平洋戦争の激戦地となったペリリュー島もあり、今も激戦の傷跡が随所に残っています。今この島を「美しい」と言えるのは、平和だからこそ。打ち寄せる波を見ながら、平和であるから旅ができるんだと感じます。
パラオの子どもたちとの“約束”
パラオを訪れて以降、頻繁に見聞きする言葉があります。『パラオ・プレッジ(Palau pledge)』これは観光客が入国前に「パラオの自然を守る」という誓約に署名するというものです。パラオ・プレッジの一番の特徴は誓約の起草にパラオの子どもたちが関わったこと。環境保護を謳う条例は数あれど、パラオ・プレッジは未来を生きるこどもたちに環境への配慮を約束するという、先進的な取り組みなのです。 さまざまな環境への取り組みを行う ピースボート・クルーズはパラオ・プレッジが義務化されてから初の大型客船だったこともあり、トミー・レメンゲサウ大統領も来船してセレモニーも行われる中、私たちも誓約に署名しました。
パラオ・プレッジにはパラオの人びとも署名をしています。そこには「変化をおこすにはすべての人のコミットが必要である」という大統領の言葉が反映されています。『足運びは慎重に、行動には思いやりを・・・』そう書かれた誓約に署名したことで、私たちも滞在中は自然環境に配慮した行動を意識し、パラオの文化を尊重するよう心掛けました。パラオの子どもたちのために、この美しい海や森を守りたい――南の楽園で思いがけず出会った“未来への約束”は、旅行者という立場を超えて、誰もが環境に対してアクションを起こせることを教えてくれました。
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